絹の心

学生の頃読んだので記憶に薄いけれど、参議院議員も務めたことのある森田たまさんという作家の随筆の中で「絹の心」というものがあった

ある男性が結婚して新米主婦の奥さんが毎日弁当を作っていた
ある日、折角作った弁当におかずを入れ忘れてしまった
男性がお昼に弁当箱を開けると白米と梅干だけが入っていたとか

家に帰ってみると電灯も点けずに奥さんは一人泣いていたという
「どうしたの?」と尋ねると
「あなたが食べるものがなかったのは私の責任だから、私も何も食べられなくて、ただあなたに謝りたくて待っていました」と答えたと言う

そんな愛らしい奥さんも残念なことに若くして亡くなってしまった
有能だったその男性は意気消沈して仕事も手に付かなくなった
見かねた上司が才色兼備な女性と再婚させたそうだ
何をさせても卒なくこなす非常に出来た女性だったらしい
でもその男性は先の奥さんのことが忘れられなかったとか
先の奥さんは絹の心を持っていた
絹は最初は冷んやりするけれどもいずれ肌になじむ
ところが今の奥さんは非の打ちどころが無いけれど、何かズックのような肌触りがしてしまうとか
大切なのは行為でも結果でもなく心だよね

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