いのちをいただく
坂本さんの職場では毎日沢山の牛が殺され肉が卸されている
ある日、牛を乗せたトラックがやってきた
「明日の牛か…」 いつまで経っても荷台から牛が降りてこない。
不思議に思って覗いてみると10歳位の女の子が牛のお腹をさすりながら何か話し掛けている 「みいちゃん、ごめんねぇ。ごめんねぇ……」
(見なきゃよかった)
女の子のおじいちゃんが頭を下げた
「みいちゃんはこの子と一緒に育てました。ずっとうちに置いとくつもりでした。でもみいちゃん売らんと正月が来ないんです。明日はよろしくお願いします…」
(もうこの仕事はやめよう…)
坂本さんは明日仕事を休むことにした
家に帰って小学生の息子に話した
息子は 「やっぱりお父さんがしてやってよ。心の無い人がしたら牛が苦しむから」
心が揺れた。
しぶしぶ出勤した 牛舎に入った。
みいちゃんは威嚇するポーズをとった
「ごめん。みいちゃんが肉にならんとみんなが困る…」
みいちゃんは首をこすり付けてきた
殺すとき急所をはずすと牛は苦しむ
「じっとしとけよ」
みいちゃんは動かなくなった
目から大きな涙がこぼれ落ちた
牛の涙を初めて見た
出典:いのちをいただく
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